「ペルソナ 脳に潜む闇」(講談社現代新書) 中野信子

この自伝はただの自伝ではない。自伝を数多く読んできたが、ここまで闇深いものはなかった。

古くから小説家など文章を生業にする人たちの最期が悲劇的なものであることが多い。

晩年の芥川龍之介の編み出した作品の真面目さとかすかな暗さに近いものを感じた。

自伝の書き方も過去から未来へ述べていくのではなく、時間の流れを逆に書いていくことで自分の過去を深堀りしていく書き方が今までない方法だった。もしかしたらこれも闇の深さを増す要因かもしれない。

 

幼少期における周りからの否定的な反応。もう諦めたのか達観しているように見える。ただ、達観しながらも淡々と人生を進めている。

闇深いが東大というブランドを自覚して、その効用を最大限生かしている。

 

自分の考えている自分自身と他人から見える自分自身に関して他人に文句を言っているが、如何ともし難いことであり、それを一致させようとするのは自分自身であり、他人ではない。この本を読めといっているが、ここまで世の中に名前が売れているのだ。ここまで表現が多様化した世界で、もっと違う手を考えたほうが良い。

 

闇深いながらも文章も筋が通っており興味深く読むことができた。まだテレビで見たことがないが、いつか見てみたい。