とある先輩社員の話

 とりあえず食っていければ良いと思って初任給の高い会社に就職した。会社名は何度も変わったけれど、同じような仕事を続けて20年を超えてしまった。

 20年の間にさまざまな人と仕事をしてきた。

 配属直後、配布されたパソコンを開封していると「うるさい」と言ってきた先輩社員。

 会社人生がこれからだというのに幸先が悪く、この後も良いことが無いだろうなと思ってしまった。(確かに仕事で良いことは無かった・・・)

 その先輩社員はかなり優秀で、数年後には幹部社員になり各地を飛び回っていた。その人の部下だったせいで大混乱プロジェクトに巻き込まれ痛い目にあったのは今となっては懐かしい思い出だ。

 昨年、その先輩社員は突然倒れてしまう。何年も前に部署が違っていたこともあり、直接会話する機会もほとんどなくなっていた。倒れたあとも大変で、坂道を転げ落ちるようだった。

 単身赴任先でしばらく入院しても症状は良くならず。小康状態を見計らって自宅近くの病院に転院。

 会社もずっと休んでいたが、ちょうど会社で早期退職キャンペーンが行われていて、割増された退職金をもらって会社をあとにした。

 しかし、家に帰っても妻とは別居。子どもたちも独立していて、広い2世帯住宅に自分の母と2人だけで住んでいる状態となった。趣味もなく、暇を持て余しているように見えた。

 自分の目から見ると、仕事に入れ込みすぎたような気がする。

 

 なにか一つに入れ込むのはだめなのだろうか。人間は不器用でなかなか同時に2つ以上のことができない。仕事を趣味にしていると、仕事がなくなったあとの時間を持て余してしまう。会社を去ったあともかなり長い時間を生きていかなくてはいけない。

 

 やはり老後に向けて趣味を見つける必要がある。収入があるうちに複数の趣味を初めておき、退職後にそれを本格的に回していく。

 初期投資を収入があるうちに終わらせて、退職後はお金がかからないようにしたほうが良い。

 趣味を見つけるのを趣味にしようと決意した。